ジェームスゴールウエイについて,その 1 

  私が、初めてフルートを手にしたのは、1970年、動機は、唯、何となくですが、その頃、吉田雅夫先生が、Eテレでフルート教室を始められ、先生が演奏されたグルックの「精霊の踊り」の余りに美しいフルートの音色に影響されたのかも知れません。因みに先生は、N響の主席フルート奏者時代、あの伝説的天才フルート奏者かつ名教師のマルセル=モイーズに直接レッスンを受けにフランスに行っておられます。また、ゴールウエイも、モイーズの孫弟子にあたります。1970年、ゴールウェイは、カラヤンベルリンフィルに主席フルート奏者として入団。カラヤンが、電話越しにゴールウエイの演奏を聴いて、「よし、君だ」と言った具合の100%嘘話も流布されるほどでした。1972年、カラヤン指揮でモーツアルトのフルートとハープのための協奏曲を録音します。私もこのレコードを持っていますが、この時のゴールウエイの演奏、フルートの音の概念を変えるような唖然とするパフォーマンス。まさに、モイーズが追求してきた音ではないかと思わせるほどです。天才少女、アンネ= ゾフィー= ムターが、やはりカラヤンベルリンフィルモーツアルトのヴァイオリン協奏曲「トルコ風」を弾いています。表現力の豊かさとひたむきさは、よくわかるのですが、カラヤンの手のひらにいるという感覚は、免れません。個人的感想になりますが、ゴールウエイは、あのベルリンフィルをリードしているようにも見えます。換言すれば、ことフルートハープに関しては、カラヤンより俺のほうが研究していると言わんばかりです。確かにそれは、ヴァイオリン協奏曲やピアノ協奏曲に比べ、ちょっとモーツアルトの主流から外れるので、カラヤンもさほど力を入れていなかったのかも知れませんが。ここでちょっと寄り道しますが、オーケストラの主席フルート奏者にとって最も吹きたい作品って何でしょうか。穏当なところで、ドビュッシーの「牧神の午後の前奏曲」?それとも、スメタナの「モルダウ」の冒頭部分?いいえ、私は、ドニゼッティのオペラ「ランメルムーアのルチア」の中のルチア狂乱の場で半狂乱になったルチアと対話するような3分間ほどのフルートソロです。これで、世紀のプリマドンナ、マリア=カラスやエディッタ=グルベローヴァさんを支え、協演出来れば、笛吹き冥利に尽きると思います。ゴールウエイもレコーディングはないようですが、ベルリンフィル時代当時の名ソプラノ、ドイテコムさんあたりとルチアを協演しているのかも知れません。さて、私はと言えば、何事もやるからには、基礎からという性格なので、1976年あたりから1999年まで正式に、先生につきました。もちろん、プロになろうという気はさらさらなく、毎週のレッスンをゆっくり楽しんできたわけです。今は演奏はやめて専ら聴く側です。23年間の成果、2年間くらい真面目に練習したので、バッハのト短調ソナタは、全楽章まあ何とか、有名なハンガリー田園幻想曲は、前半のゆっくり部分はいいのですが、後半のハンガリーの舞曲の部分、能力を超えるものでした。またこれから何か楽器を始めたいと思っている人は、フルートは一番だと思います。まずその音色の美しさ、楽譜の多さ、軽く5000曲はあるでしょう。モーツアルトなどクラッシックもいいですが、ママス&パパスの「カリフォルニアドリーミン」やユーミンの「春よ来い」など丁寧に吹ければ、人生変わります。余計なことですが、もしフルートを選ぶのなら余程細い指でない限り、キーの真中がくりぬいてあるいわゆるリングキーを経験上お勧めします。さて、1975年、ゴールウエイは、ベルリンフィルを去ることになります。続きはまた。